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今日は冬コミで.hack//SIGNのクリムと楚良の本を頒布しました。
ありがとうございました。
以下は時間がなくて出せなかったペーパーです。
ありがとうございました。
以下は時間がなくて出せなかったペーパーです。
はじめましてこんにちは、carico(かりこ)といいます。普段は真・三國無双シリーズの張郃中心に活動しています。今回は、.hack//SIGNの楚良とクリムの本を出しました。お手にとってくださって本当にありがとうございます。
冬なのに夏に海に行く本を出してしまいました。
元々夏コミに出す予定だったんですけど、落選してしまい、冬向けに新しい話をつくる気が全くなく、夏コミで頒布する予定だった夏の話をそのまま冬コミで出しました。
ただ、元々今回の話は.hack//SIGN放映時に当時の私が妄想していたことがベースとなっていて、当時から季節関係なく車で海に行って欲しいと思っていたので、患い続けていたものを十四年目にしてようやく形に出来た、という方が大きいです。
ところでこのペーパーのタイトルは「妄執その二」なのですが、これは二〇一三年十一月に「黄昏祭」という.hackオンリーイベントがありまして、そこにサークル参加した私が出したペーパーのタイトルが「妄執+四コマ」だったんです。今回はその流れを汲んで「その二」です。そのときは、つらつらとカールの役割について書いたのですが、今回は楚良とクリムに対する妄想と執着を書いていきたいと思います。
ここから先、全て「.hack//G.U.発売以前の妄想」を元にしています。
私は、ソラとカールについては、破滅的で、最終的にはどうしようもなく別れるという結末が好きなので、やっぱりそういう話ばかり妄想してしまいます。けれど、.hack//SIGNの楚良とクリムは違います。私は楚良とクリムという組み合わせにおいては、クリムに楚良の面倒を見て欲しい、あわよくば彼を救って欲しいと思っています。
楚良というキャラクターは、.hack//SIGNにおいては最後の最後で失敗してしまう、一人だけ救われないキャラです。その彼が、カールやカイトと交流して、最終決戦のときには力を貸して、ついに世界を救う一助となって現実世界に帰還します。そのとき、一体誰が彼を労わるのだろうと思っていました。
優しくしてくれた司と昴はもうきっとほとんどログインしていないでしょう。ミミルは弟の世話が忙しいでしょう。ベアは司との生活が忙しいでしょう。BTは面倒を看るタイプじゃないでしょう。銀漢は論外でしょう。
クリムしかいない。
あの.hack世界で唯一無二絶対最高の精神健康優良成人男性で面倒見のいいクリムしかいない。
そう思いました。
ここからは、私が思う二人について書いていきます。
クリムについてですが、元々、楚良は自分から彼に突っかかっていました。そのたびに彼も相手をしてくれました。それも、いつも真正面から相手をしてくれました。
ちょっとした苦言は誰でも楚良に伝えています。それだけ楚良が面倒くさい男だったんですけれど、楚良はその「ちょっとした苦言」を煙に巻いてしまう天才でした。ほとんどの人はそういう楚良に真面目に対応するのが面倒臭くなって、だんだんと適当にいなすようになります。
けれど、司、昴、そしてクリムは違ったように見えます。
ただ、昴と司はお互いに集中してたので、楚良どころではありません。だから、何度もぶつかっても、ちゃんと真正面で受け止めて対応してくれた人は、クリムしかいなかった。私はそう思っています。
大事な場面のときも、ちゃんと楚良の対応をしてくれる。ちゃんと楚良と向き合って、楚良の弱いところを突いて、それじゃだめだと諭してくれて、高所から突き落としてくれる(物理)、そういう存在ってクリムだけです。
そういうクリムに、帰還後の楚良を助けてほしかったんです。
こう書いていると、「楚良救済のための装置が欲しいだけでは?」と思われるでしょうけれど、私はクリムも一緒に幸せになってほしいんです。
少し、クリムについて書きます。
クリムのリアルは本編内でもザ・ワールドのその他副読本でもほとんど明かされていなくて、海外出張とかで忙しい商社マンということだけわかってます。劇中で窺い知れるあの優れた洞察力、社交性の高さ、ロールのぶれなさ、細やかな気遣い、知識量など、たぶん、相当できる人、具体的に言うといいところの大卒社会人同年代の中では給料もらってるほうの人なんだろうなと想像しています。
けれど、なんでそんな人がTHE WORLDをやっているのかといえば、きっとそれはリアルで満たされないものがネットで満たされたからだと思います。その満たされたものというのは、リアル以外での人との出会い、リアル以外での役割、究極的にはリアルでは達成できないクリムという自分の振舞いたいキャラになりきって遊ぶことだったのかなと思っています。
それでも彼がリアルで培った魅力はキャラを通してさまざまな人に伝わります。(そもそも、キャラクターになりきるといっても、そのキャラクターは本人に知識がない限りロールしきれないのですから、クリムは間違いなくリアルの彼の一側面を拡大したものでしかないのです。)その魅力が、昴を励まし、騎士団をつくりあげる一因となりました。
ただ、その騎士団から抜けた後、彼は一体どうしたのかしらとずっと考えてます。クリム自身は何も語っていません。義務と責任が増え膨らみすぎた集団から抜けて、ただのクリムに戻って、きっと今までよく話していた人とも話しづらくなったりして、今までやってたことはできなくなって、そういう時、彼ってどうしたのでしょう。
私の中では、「変わらずずっと遊び続けて、持ち前のコミュニケーション能力の高さでまた別の楽しみを見つけたのだろう」と結論づけていますが、それでも脱退したときに彼は疎外感と寂しさを多少は感じただろうと思っています。その感情は、何かの集団から抜け出た人間が自然と感じるもので、もしも意識不明だった楚良がTHE WORLDに戻ってきたときに感じるものがあれば、それはきっとクリムが騎士団を抜けたときに感じたものと近しいと思います。
こういう感情の共通点があったのではないか、という前提を踏まえた上で、私の妄想は続きます。
次に、楚良の話を、少し、します。
私は、楚良のリアルは、親は大手企業に勤務している、両親共働き、楚良が小学校にあがってからは家に帰るのも遅く、早めに帰ってきても夜の九時ごろ、というような家だといいなと思っています。そうでもないと、あの奇行、誰かに構って欲しくてたまらない承認欲求の塊、構ってくれた相手(クリム)を指名してまで追いかけ戦いを要求する幼稚さを、説明しきれないです。
親は確かに楚良を愛していても、時間があまりかけられないタイプの人だから、他人が自分に優しいのはわかっているけれど、親があまりいてくれないから他の誰かに自分の都合の良いように構って欲しいのかしら、と想像しています。
とても熱心に働いている人は、仕事のスタイルを変えづらいものだと思います。楚良が手のかからない子供であればあるほど家を空けてしまう。楚良がもうゲームは前のように没頭しないようにすると言えば安心してしまう。そういう親なんじゃないかしらと想像していました。
そういう妄想を踏まえて、私は、楚良がTHE WORLDにログインする理由は、ゲームの楽しさと、寂しさを埋めることと、リアルでの鬱憤晴らしだと思っています。
本編で垣間見えた楚良のリアルの姿は、いいところのお坊ちゃんそのものでした。それを見たとき、私は「ああ、イイコであるように抑圧されているタイプの子だ」と思いました。そして、あの我侭の権化、幼稚さと狡猾さを混ぜたものが楚良として出てきたのは、清く正しく優秀で未来の明るい小学四年生でいなくてはいけないというプレッシャーがあったのかしら、とも。
だから、THE WORLD内で意識不明というしっぺ返しを食らったとしても、親が時間をかけてくれない限り、イイコであることを諦めてくれない限り、楚良は”楚良”という捌け口を捨てることはできない。そうしたら絶対にまたログインしてくる。けれど、ある特定のサイトに常駐していると、ほんの少し見なかっただけでも、置いていかれたという感覚が沸き起こる。その感覚に、小学四年生の楚良が耐えられるのだろうか?私は耐えられないと思いました。彼は寂しさと違和感を覚えると思いました。
そういう、楚良の虚ろな心に、クリムという存在が降りてきてほしい。
黄昏事件も収束し、元に戻った世界において、クリムは、全て終わって、大切な存在は他に大切な人をつくって、ああTHE WORLDは誰かに救われたのだな、一仕事終えたなあ、というところだったでしょう。
そういうクリムの少し隙間のできた心に、楚良という小学生の存在がすっと入り込んで欲しい。
だから、私にとっては、THE WORLDが正常に戻った後こそ、二人はぴったりなんです。昴が完全に独り立ちしたクリムと、復帰はしたけれど知人はいても友人はいない楚良、そういう穴の開いた二人にまた出会って欲しい。そういう二人にちゃんと話し合って欲しい。
そういう、今ではもう絶対に成立しない話を、今回の本で描きました。
本当はまだたくさん妄想を書けるんですけれど、一旦このあたりで終わらせておきます。あとは本当に個人的な感想です。
楚良がクリムと出会って少しずつ健康になる様子を、曇ることなく考えていたあの頃が、私は好きでした。
楚良とクリムは私をいっぱい変えた、私の幼い頃のきらめき、夢のかけら、憧れ、淡い恋心、好きな人でした。
好きな人にはたくさんしあわせになってほしかったです。
ずっと楚良が好きです。ずっとクリムが好きです。
ずっと好きです。
carico
(3864文字)
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