忍者ブログ
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

以下、2013年11月3日開催の『黄昏祭』において発行したコピ本兼ペーパーに載せた長文です。一部削除・訂正しました。





 楚良の魅力は色々ありすぎて、書くのが苦手な私はそれをうまく著せないのですが、とりあえず一つ挙げるとすれば、彼の身勝手さが好きです。楚良は.hack//SIGN中に登場する人間の中で最も自己中だと思います。それがイイのです。我侭全開で行動して、最後にツケを払わされる、限りなく自業自得なその姿が可哀想で好きなのです。彼はクリムから叱責されたり司と関わりを持とうしたりすることでハッピーエンドに辿り着こうとしましたが、その寸前で失敗した人間です。他のSIGN勢がハッピーエンドで物語を終え舞台を降りた一方で、バッドエンドに突入した楚良はソラとして別の物語、すなわち.hack//ZEROに移動するのです。ですから私にとって.hack//ZEROは失敗した楚良=三崎亮のハッピーエンドへ繋がるための足がかりとなる物語でした。
 ところで、.hack//ZEROだけに現れるカールは、私にとって、他人と正しく関われば得られるはずだったハッピーエンドに失敗したソラと交流し、彼が救われる手助けをするはずの存在でした。私は、楚良がハッピーエンドに辿り着けなかった最大の理由は他人をゲームのキャラ以上の存在と捉えていないような態度にあると思っています。ですから、カールはソラに痛めつけられても拒絶されても見向きもされなくても、彼を求め続け、ソラに他人を直視させるよう尽力し、ハッピーエンドに辿り着くための精神を獲得させようとして、最終的に失敗するキャラだと考えています。その行動を端的に表現すると「あたしを見て欲しい《→「データドレインで未帰還者《です。
 カール視点から.hack//ZEROを見るとどうなるのでしょうか。カールは姿の見えない父親の欠片を求めてThe Worldに入れ込みます。彼女の父親は現実世界に存在し、会おうと思えば会えますが、彼女は父親と直接は会わず、The Worldで彼の影を追い求め、それが幻だったことに気付いて絶望した末に、仮想世界に存在するソラに惹かれ、彼を求めるようになります。ソラは、カールの父とは対照的に、仮想世界にしか存在しませんが、目に見え、存在を実感できる人間です。(個人的にこの対比が凄く好きです。)しかし、彼女が会っているソラはスケィスにDDされたせいで意識をThe Worldに閉じ込められているという上安定な状態の楚良で、三崎亮の意識が覚醒すれば、少なくとも目の前の、PLである三崎亮とPCである楚良が混同しているソラは消えます。もうこの時点でカールのソラに対する想いは潰えざるを得ません。その上、後に発売された.hack//G.U.のハセヲの設定により、意識を回復した三崎亮は最早楚良のことを覚えていないということになりましたから、ソラが意識を回復すればカールはもう永遠に彼と会うことは出来なくなります。.hack//G.U.のこの設定さえなければ、カールはソラには会えなくても、Unisonのように無事に帰還した楚良とは会える可能性があったのですが、この設定のおかげで、カールは.hack//ZEROの瞬間しか三崎亮が背後にいる楚良には会えないことになりました。可哀想としか言い様がありません。この絶対的な別離に加えて、カールはソラもといスケィスにDDされることが確定しています。狂おしく求めた相手から攻撃を受け意識上明に陥り目覚めた時にはもうその人には二度と会えない。どう考えてもトラウマものです。.hack//ZEROは、カールが、アルフとの関係や、父親との関係、The Worldとの付き合い方、現実世界での付き合い方など、ソラ喪失後にまだ残っている人間関係をどうにかしない限り、仁村潤香の心に大きな傷跡を残すだけのとんでもない悲劇物語になると思います。
 ゲーム以降の展開を振り返ると、楚良のDD後、三崎亮の意識がある楚良と話をした人間は、カールとカイトだけだと思います。最終的に楚良はカイトによって解放され、現実に帰還しますが、カイトと楚良はほとんど交流しません。唯一の会話は、楚良が双剣を渡すイベントでの「ありがとう《だけだと思います。ゲームクリア後およびUnisonの楚良は放浪AIですから論外です。このDD後の楚良に関わった人間の少なさという点からも、ソラを求めて繋がろうとしたカールは本当に貴重なのです。
 カールは、三崎亮の意識がある状態の楚良を能動的に・心から求めてくれた最初で最後の人間です。その感情が多少歪んでいたとしても、The World内に閉じ込められたソラと一緒にいようとしてくれたカールは、本当に楚良を助けてくれる存在だったと、今でも思っています。
 私は、傷つきながら手に入らない者を求め続けて最後にはその人にDDされるカールが好きです。気持ち悪いと思われるかもしれませんが、カールは私が思い描く「楚良に関わる女性《の理想型でした。小学生であること、大人のふりをしていること、ひねくれていること、上器用なこと、素直になれないこと、全てが理想的でした。今でも彼女がソラについて思い詰める姿を見ては同情します。ソラもおそらく素直になれていない小学生でした。彼ら二人がお互いにボロボロになりながら求め合う姿が見たかったです。
 私にとって.hack//ZEROとは、楚良=三崎亮の救済の物語の一部であり、カール=仁村潤香の悲劇物語です。楚良の回復は、Unisonで達成、あるいは.hack//Rootsを経て.hack//G.Uで達成されますが、それ以前に関わってくれたカールの存在を忘れてはいけないと思います。一方で、カールは悲劇物語からいまだに回復出来ていません。というか、話が途中で止まっているので、悲劇の真っ最中で止まっている状態です。三崎亮はその後救済されることが分かっていますが、仁村潤香はどうなるのでしょうか。彼女も帰還した時に記憶を失っているのでしょうか。記憶があってもなくても悲しいことには変わりありませんが、とにかく.hack//ZEROの続刊早く出てくださいお願いします。

 2013.11.03
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
忍者ブログ [PR]